魔法は手作り

   共通意識の檻、知らない側面と無限の理想、終わりのある永遠、1月。優しさを疑った瞬間に、もしくは謙遜と尊敬を出し惜しんだ瞬間に、平等の城は崩れてしまう。いつかのわたしを欺いて、献身だけが正義だと信じている。冷たい顔をした瞬間、手を離した瞬間、足並みを崩した瞬間、全ての魔法は解けてしまう。

   「みんな大好き」。それらは偶然なんかではないし、奇跡なんかでもない。優しさと譲歩と諦念と、それらを続ける努力と、気づかないフリをする余裕だけが真実である。

   いついかなる時も、どんな関係性の中にいても、誰かが誰かに寄りかかっていいはずがない。これをあって然るべきとし、コミュニケーションと呼び、横行するなどということは、ほとんど暴力に等しい。「信頼関係」という免罪符。求め続ける目と許容への誘導。こわい、やめてほしい、でも、わたしは、それを、わたしも、それを。

   我慢という概念が難しい。ストレスをストレスと認知してしまうことがこわい、これは辛いことなのだと、わたしは幸福ではないのだと思ってしまったら、一人で立っていられるだろうか、恥ずかしい、人が人に、寄りかかっていいはずがない。馬鹿馬鹿しい。甘ったれた脳を誰か殴ってほしい。

   椎名林檎の「青春の瞬き」が頭の中で鳴っている。赤いドレスで、東京事変が今まさに解散しようと、椎名林檎が、切ない目をして歌っている。